自筆証書遺言保管制度について(2020年7月10日加筆)

自筆証書遺言保管制度について(施行日2020年7月10日)2020年7月10日加筆

自筆証書遺言書は、作ったはよいけれども、その後なくしたり、災害によって消失したり、場合によっては盗まれたり、内容を書き換えられたりするリスクがありました。そこで今回の相続法の改正により法務局で自筆証書遺言書をを保管することができるようになりました。

この制度のポイントを5つ示します。

  1. 遺言能力のある15歳以上であれば申請することができる。
  2. 法務局が保管する。
  3. 必ず本人が法務局に出頭しなくてはならない。
  4. 法務局が遺言書の形式を審査してくれる。
  5. 相続発生後の検認手続きは不要。

この中でも重要なものは③④⑤です。

③法務局に本人が出頭した際には、本人確認が行われます。当然、代理人がおこなうことはできません。つまり、病院に入院中や、外出することが困難な場合には、おこなうことができません。その際に必要な本人確認書類は顔写真の記載のある公的証明書が必要です。具体的には運転免許証とマイナンバーカードです。マイナンバーカードはどなたでも作成することができるので、持っていない場合にはマイナンバーカードの作成をお勧めします。健康保険証等では代替えできません。

全ての法務局で行っているかというとそうではありません。法務局の中でも遺言書保管所に指定されている法務局だけです。江戸川区だと基本的に九段下にある東京法務局本局になります。

東京法務局 本局、板橋出張所、八王子支局、府中支局、西多摩支局
水戸地方法務局 本局、日立支局、土浦支局、龍ケ崎支局、下妻支局、常陸太田支局、鹿嶋支局
宇都宮地方法務局 本局、足利支局、栃木支局、日光支局、真岡支局、大田原支局
前橋地方法務局 本局、高崎支局、桐生支局、伊勢崎支局、太田支局、沼田支局、富岡支局、中之条支局
さいたま地方法務局 本局、川越支局、熊谷支局、秩父支局、所沢支局、東松山支局、越谷支局、久喜支局
千葉地方法務局 本局、市川支局、船橋支局、館山支局、木更津支局、松戸支局、香取支局、佐倉支局、
柏支局、匝瑳支局、茂原支局
横浜地方法務局 本局、川崎支局、横須賀支局、湘南支局、西湘二宮支局、相模原支局、厚木支局

 

④法務局は遺言の形式を審査してくれます。その内容は、「自筆で書いてあること(財産目録は除く)、日付、押印、加除訂正方法」のみです。国の機関がおこなう以上、内容に関してはチェックしません。もし、これをしてしまうと不利益を受ける人から国家賠償を請求されてしまうリスクがあるからです。当然、内容のアドバイスもおこないません。

③④に関しては従来の自筆証書で遺言書を作成していたケースに比べれば非常に使いやすくなったと言えます。少なくとも形式で無効になるリスクや、紛失、改ざんのリスクは限りなく減ったからです。

⑤に関しては、公正証書遺言と一見同じ効果です。一見と書いたことには理由があります。公正証書遺言は検認も不要でそのまま使えます。しかし、遺言書保管制度では相続人等が法務局に遺言書情報証明書の交付を請求するには、「遺言者の出生時から死亡時までの全ての戸籍(除籍)謄本、相続人全員の戸籍謄本、相続人全員の住民票の写し(作成後3か月以内)、請求人の住民票」が必要となります。これは、裁判所の検認手続よりも必要書類が多いのです。これだけの書類を集めるのは個人では大変ですし、時間もかかります。その点では公正証書遺言とは大きな差があると言えるでしょう。

これを踏まえた上で、やはり私は公正証書遺言を作成することをお勧めします。公正証書遺言では公証人が遺言の内容を面前で全て読み上げて、この内容でよいか意思確認を必ずおこないます。

それと同時に内容が実現可能かも公証人がチェックしてくれます。自筆証書遺言では例え形式上では問題なくても、内容が無効の場合もありますし、意思確認をしたという裏付けがありません。後に相続人同士で揉める可能性は公正証書で作成した方が低いと言えるでしょう。

また、民法改正により遺言書の効力が絶対的ではなくなり、相続人の一人が遺言内容と異なる相続登記を入れて善意の第三者(事情を何も知らない他人という意味です)に所有権移転登記を入れてしまうと、その第三者には不動産の権利を主張できなくなってしまったことからも、登記名義を得るまでのスピードも重要です。その面では先程書いたように戸籍等の収集時間を考えれば公正証書の方が良いと思います。

せっかく遺言書を作成するのであれば、より安全で確実なものを作る方がよいのではないかと私は考えます。 

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