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遺留分と遺留分侵害額の請求について(施行日2019年7月1日)
遺留分制度は家督相続があった明治民法の流れを引き継いだものでした。不動産を含む全ての相続財産を遺留分の割合で共有することになっていたので、家督相続が廃止された現代でも、遺言書によって相続分が少ないとされた相続人が、どの相続財産を取得するかで揉め事が絶えませんでした。改正のポイントとしては、遺留分を持つ相続人は、不動産などの物ではなく、遺留分の侵害相当額を金銭で請求することになったことです。それに伴い「遺留分減殺」という言葉も「遺留分侵害額の請求」という言葉に変わりました。
・遺留分とは
そもそも遺留とは何かといいますと、遺言などによって相続が受けれない(または遺留分よりも少ない相続分しか受け取れない)相続人に、その生活の保障、および相続財産の形成に貢献した潜在的持分の清算とされています。
抽象的なことを言ってもよくわからないので、具体的なケースを挙げて説明します。
相続財産 1,500万円
遺言で相続人ではない第三者に全て遺贈する。
というのを基本事例で考えます。
・相続人が配偶者と長男、次男の3人の場合
まず1,500万円×遺留分1/2=750万円で遺留分全体の金額(総体的遺留分)を計算します。
- 配偶者 750万円×法定相続分1/2=375万円(個別的遺留分)
- 長男 750万円×法定相続分1/4=187.5万円(個別的遺留分)
- 二男 750万円×法定相続分1/4=187.5万円(個別的遺留分)
・相続人が配偶者と父親、母親の3人の場合
まず1,500万円×遺留分1/2=750万円で遺留分全体の金額(総体的遺留分)を計算します。
- 配偶者 750万円×法定相続分2/3=500万円(個別的遺留分)
- 父親 750万円×法定相続分1/6=125万円(個別的遺留分)
- 母親 750万円×法定相続分1/6=125万円(個別的遺留分)
・相続人が父親、母親の2人の場合
まず1,500万円×遺留分1/3=500万円で遺留分全体の金額(総体的遺留分)を計算します。
- 父親 500万円×法定相続分1/2=250万円(個別的遺留分)
- 母親 500万円×法定相続分1/2=250万円(個別的遺留分)
・相続人が配偶者と兄の2人の場合
まず1,500万円×遺留分1/2=750万円で遺留分全体の金額(総体的遺留分)を計算します。
- 配偶者 750万円×法定相続分3/4=562.5万円(個別的遺留分)
- 兄 遺留分なし=0円
ポイントは2つです。
- 通常の遺留分は全体の1/2、親(直系尊属)だけが相続人のときは遺留分は全体の1/3
- 兄弟姉妹が相続人の場合は遺言書がある場合には遺留分はない。
個別的遺留分の計算自体は改正前と変わっていません。
改正によって変わったのは遺留分を算定するための財産の価格の算定方法です。
遺留分を算定するための財産の価格 | = | 相続開始時における被相続人のプラスの財産 + 第三者に対する生前贈与(原則として1年以内) + 相続人に対する生前贈与(原則として10年以内) |
- | マイナスの 財産 |
相続法の改正前は相続人に対する生前贈与に10年の期限はなく、何年前でも原則含まれていました。いくらでも遡れるとなれば、いざ裁判になったときに、昔お金を貰っていたはずだ、いや貰っていない、証拠はあるのか、と話がまとまらず、長引く一方であったことを想像するのは容易いかと思います。そういった争いを減らすためにも、今回、改正されたわけです。
最後に、相続法改正前と変わっていませんが遺留分に関して大事なことを書きます。
遺留分侵害額請求権の期間の制限についてです。
- 相続の開始および遺留分を侵害する贈与または遺贈があったことを知った時から1年間
- 相続開始の時から10年間
を経過したら時効で請求できなくなってしまいます。
相続は揉めだしたら1年なんてあっという間なので遺留分侵害額の請求を考えている場合は早めに相談して下さい。