この遺言書は有効?無効?

以前書いた「この遺言書の印鑑は無効?有効?」というコラムが意外と好評だったので、同じようにクイズ形式で遺言書に関する疑問に答えていきたいと思います。

 

第1問

封筒に糊付けされて封されている自筆証書遺言の封筒を勝手に開けてしまったら、遺言書は無効になる?

 

 

 

 

 

答えは、無効にはならないです。

 

ただし、自筆証書遺言は家庭裁判所に提出して検認という手続きをしなくてはなりません。

 

この検認手続をしないで開封してしまうと、民法第1005条により5万円以下の過料を受ける可能性があります。

 

よく昔のテレビドラマや映画だと、お葬式で突然弁護士が現れて自筆証書遺言の封を切り、第三者に遺贈する内容を伝えて親族が驚くってパターンがあったように思いますけど、最近は見ないですね。

 

その辺りも、法律監修がしっかりしてきてるので、法に触れるような内容の放送は無くなってきてるように思います。

 

そういったところに注目してドラマや映画を観てみるのも面白いですよ。

 

最近では、公正証書遺言を弁護士が持ってくるパターンが増えた気がします。

 

公正証書遺言だと検認手続はいらないので。

 

 

第2問

遺言のメッセージをビデオに残した場合は有効?無効?

 

 

 

 

 

答えは無効です。

 

映像がしっかり残ってるので、むしろ遺言書よりも信ぴょう性が高いような気がしますが、これはダメなんです。

 

遺言書というのは要式をしっかり満たさないと効力が発生しないのです。

 

民法には、自筆証書遺言に関しては第967条に「日付、氏名、押印」という要件が示されています。

 

これを満たしていないからビデオだけでは有効とはならないのです。

 

民法が古くて時代に追いついていないのでは?って話もありますが、時代は更に先を行って映像自体も偽造できる時代になってきてます。

 

どこかで線引きする必要があるのでしょうね。

 

でも、ビデオ撮影をしておくことは無駄ではないですよ。

 

要式の整った遺言書作成とビデオ撮影の両方を行っておけば、その後、有効性を争う紛争になる可能性は格段に下げられます。

 

そういう意味では有効な手段かもしれません。

 

 

第3問

自筆証書遺言を書こうとしたら手が震えて上手く書けなかったので、他の人に添え手をして貰って書いた場合は有効?無効?

 

 

 

 

 

答えは、一応有効です。

 

これは判例(最判昭和62年10月8日)があります。

 

ポイントは「添え手」ってとこです。

 

いったいどこまでが「添え手」と認められるかですよね。

 

判例は「他人の添え手が、単に始筆若しくは改行にあたり若しくは字の間配りや行間を整えるため遺言者の手を用紙の正しい位置に導くにとどまるか、又は遺言者の手の動きが遺言者の望みにまかされており、遺言者は添え手をした他人から単に筆記を容易にするための支えを借りただけ」と示しています。

 

要は、意思能力としても書けるし、震えた字でよければ本当は書けるんだけど、見栄えのためにちょっとした手伝いをしただけなら問題ないでしょうといったところです。

 

実は、この判例は「添え手」をしてもOKな場合があるで有名な判例なんですけど、裁判としてはこの遺言書は無効となっています。

 

それはちゃんと綺麗な字で書かれている部分と乱れた字で書かれた部分が遺言書の中に混在していたからのようです。

 

つまり「添え手」の範囲を超えていた部分があると。

 

そう思うと「添え手」で自筆証書遺言書を書くことはリスクが大き過ぎます。

 

文章をしっかり書けるか迷う場合は、公正証書遺言をお勧めします。

 

 

第4問

自筆証書遺言は、日付を書くことは要件の一つですが、日付を間違えてしまったら、有効?無効?

 

 

 

 

 

答えは、ケースバイケースです(ちょっとズルい回答です…。)。

 

日付を間違えても有効な場合の判例(最判昭和52年11月21日)で、「自筆遺言証書に記載された日付が真実の作成日付と相違しても、その誤記であること及び真実の作成の日が遺言証書の記載その他から容易に判明する場合には、右日付の誤りは遺言を無効ならしめるものではない。」と示しています。

 

ポイントは誤記であることと真実の作成の日容易に判明することってとこです。

 

そんなことってあるんでしょうか。

 

この判例では、昭和48年と昭和28年を間違えたようです。

 

でも、実は無効になっている判例も存在します。

 

日付の間違いは怖いです。

 

基本的には「令和〇年〇月〇日(もちろん西暦でもOK)」と書けばいいのですが、特定できれば問題ないとされています。

 

具体的には、「私の〇〇歳の誕生日」ならその日しかないのでOKです。

 

逆に「令和〇年〇月吉日」のようなものだと、吉日って何日?と特定できないので無効です。

 

 

第5問

自筆証書遺言は、氏名を書くことは要件の一つですが、苗字を書かなかったら、有効?無効?

 

 

 

 

 

答えは一応有効です。

 

判例(大判大正4年7月3日)は、「吉川治郎兵衛」さんが「をや(親って意味です)治郎兵衛」と書いた場合のものです。

 

裁判所の判断としては、氏名を書くのは、遺言者が誰かを明確にするためであって、遺言者が誰であるのか明確であればそれでよいといったとこです。

 

わかりませんが、「をや」って書いてあり、相続人へ相続させる内容だったことが大きいと思います。

 

もし書いてなかったらどうなんでしょう。

 

その他の文面で特定出来ていればいいですが、第三者への遺贈だと特定できるかどうか疑念が残ります。

 

ちなみに、誰か明確であればよいということなので、芸名でもよいと言われています。

 

もちろん、有名でみんなが知っているような芸能人じゃないと難しいですよ(笑)。

 

でも、あえてそんなリスクを負うことはやめて下さいね。

 

ちゃんと自分の名前をしっかり書きましょう。

 

 

どうでしょうか。

 

自筆証書は特に要件の部分で間違えるとリスクが大きいです。

 

私は、遺言書は公正証書遺言をお勧めしています。

 

確かに費用はかかりますが、人生の総決算のような大事なことですので石橋を叩くくらいでよいと思っています。

 

 

江戸川区で遺言・相続手続き、相続放棄は司法書士福地事務所 代表 福地良章

 

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