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相続放棄の順番~相続放棄をしたら次は誰が相続するの?~
今回は相続放棄についてよく聞かれる疑問点をお話します。
このような家族がいたとします。
真中右のメガネの男性Aさんが突然、交通事故で亡くなってしまったとします。
大変でしたがお葬式もやっと片付いたところ、サラ金から「亡Aさんは借金がある。法定相続人は支払って下さい」という内容の手紙が届きました。
ビックリする話ですが、結構ある話なんです。
相続するプラスの財産よりもマイナスの財産が多い場合は相続放棄を検討することになろうかと思います。
では、この場合に借金の請求を受ける法定相続人は誰かというと、配偶者である奥さんと第一順位であるお子さんです。
イラストではお子さんは赤ちゃん、つまり未成年です。
奥さんと未成年のお子さんが同時に相続放棄をする場合は普通の手続きでできます。
もし、別々の手続きとなると利益相反にあたるので特別代理人の選任が必要になりますが、この場合では当然に同時に相続放棄をするかと思うので説明は省きます。
奥さんとお子さんの相続放棄が終わったと安心していいんでしょうか。
この借金はどこへ行くのかというと、第二順位であるお父さんとお母さんです。
相続の順位通りに借金の請求もやってきます。
お父さんとお母さんの相続放棄が終わったらこれで終わりでしょうか。
そうです、次は第三順位である兄弟であるBさん、Cさんにまで請求はやってきます。
ここで疑問なのは兄弟であるBさんにお子さんがいた場合は、Bさんが相続放棄をした場合にBさんのお子さんも相続放棄をしなくてはいけないか?ということです。
これはご安心下さい。
相続放棄をする必要はありません。
相続放棄をすると、「初めから相続人とならなかったもの」とみなされるので、下に行く(代襲)ことはないのです。
では、兄弟も全員、相続放棄をした場合はどうなるんでしょうか。
この場合には、相続財産管理人という人が選任されてプラスマイナスの財産を清算して、残りが出たら国、でなければ債権者に泣いて貰うということになってます。
相続財産管理人に関しては、色々と論点もあるので、またの機会で書きたいと思います。
どうでしたか?
相続放棄は自分さえ放棄したらそれで良いって訳でもないのです。
家族、親族に迷惑をかけないで行いたいと思う人が多いかと思います。
そういった場合では、司法書士福地事務所では2人以降は1人目の半額の報酬で行っております。
確実に正確に相続放棄をするためには専門家にご相談下さい。
江戸川区で遺言・相続手続き、相続放棄は司法書士福地事務所 代表 福地良章
この遺言書は有効?無効?
以前書いた「この遺言書の印鑑は無効?有効?」というコラムが意外と好評だったので、同じようにクイズ形式で遺言書に関する疑問に答えていきたいと思います。
第1問
封筒に糊付けされて封されている自筆証書遺言の封筒を勝手に開けてしまったら、遺言書は無効になる?
答えは、無効にはならないです。
ただし、自筆証書遺言は家庭裁判所に提出して検認という手続きをしなくてはなりません。
この検認手続をしないで開封してしまうと、民法第1005条により5万円以下の過料を受ける可能性があります。
よく昔のテレビドラマや映画だと、お葬式で突然弁護士が現れて自筆証書遺言の封を切り、第三者に遺贈する内容を伝えて親族が驚くってパターンがあったように思いますけど、最近は見ないですね。
その辺りも、法律監修がしっかりしてきてるので、法に触れるような内容の放送は無くなってきてるように思います。
そういったところに注目してドラマや映画を観てみるのも面白いですよ。
最近では、公正証書遺言を弁護士が持ってくるパターンが増えた気がします。
公正証書遺言だと検認手続はいらないので。
第2問
遺言のメッセージをビデオに残した場合は有効?無効?
答えは無効です。
映像がしっかり残ってるので、むしろ遺言書よりも信ぴょう性が高いような気がしますが、これはダメなんです。
遺言書というのは要式をしっかり満たさないと効力が発生しないのです。
民法には、自筆証書遺言に関しては第967条に「日付、氏名、押印」という要件が示されています。
これを満たしていないからビデオだけでは有効とはならないのです。
民法が古くて時代に追いついていないのでは?って話もありますが、時代は更に先を行って映像自体も偽造できる時代になってきてます。
どこかで線引きする必要があるのでしょうね。
でも、ビデオ撮影をしておくことは無駄ではないですよ。
要式の整った遺言書作成とビデオ撮影の両方を行っておけば、その後、有効性を争う紛争になる可能性は格段に下げられます。
そういう意味では有効な手段かもしれません。
第3問
自筆証書遺言を書こうとしたら手が震えて上手く書けなかったので、他の人に添え手をして貰って書いた場合は有効?無効?
答えは、一応有効です。
これは判例(最判昭和62年10月8日)があります。
ポイントは「添え手」ってとこです。
いったいどこまでが「添え手」と認められるかですよね。
判例は「他人の添え手が、単に始筆若しくは改行にあたり若しくは字の間配りや行間を整えるため遺言者の手を用紙の正しい位置に導くにとどまるか、又は遺言者の手の動きが遺言者の望みにまかされており、遺言者は添え手をした他人から単に筆記を容易にするための支えを借りただけ」と示しています。
要は、意思能力としても書けるし、震えた字でよければ本当は書けるんだけど、見栄えのためにちょっとした手伝いをしただけなら問題ないでしょうといったところです。
実は、この判例は「添え手」をしてもOKな場合があるで有名な判例なんですけど、裁判としてはこの遺言書は無効となっています。
それはちゃんと綺麗な字で書かれている部分と乱れた字で書かれた部分が遺言書の中に混在していたからのようです。
つまり「添え手」の範囲を超えていた部分があると。
そう思うと「添え手」で自筆証書遺言書を書くことはリスクが大き過ぎます。
文章をしっかり書けるか迷う場合は、公正証書遺言をお勧めします。
第4問
自筆証書遺言は、日付を書くことは要件の一つですが、日付を間違えてしまったら、有効?無効?
答えは、ケースバイケースです(ちょっとズルい回答です…。)。
日付を間違えても有効な場合の判例(最判昭和52年11月21日)で、「自筆遺言証書に記載された日付が真実の作成日付と相違しても、その誤記であること及び真実の作成の日が遺言証書の記載その他から容易に判明する場合には、右日付の誤りは遺言を無効ならしめるものではない。」と示しています。
ポイントは誤記であることと真実の作成の日が容易に判明することってとこです。
そんなことってあるんでしょうか。
この判例では、昭和48年と昭和28年を間違えたようです。
でも、実は無効になっている判例も存在します。
日付の間違いは怖いです。
基本的には「令和〇年〇月〇日(もちろん西暦でもOK)」と書けばいいのですが、特定できれば問題ないとされています。
具体的には、「私の〇〇歳の誕生日」ならその日しかないのでOKです。
逆に「令和〇年〇月吉日」のようなものだと、吉日って何日?と特定できないので無効です。
第5問
自筆証書遺言は、氏名を書くことは要件の一つですが、苗字を書かなかったら、有効?無効?
答えは一応有効です。
判例(大判大正4年7月3日)は、「吉川治郎兵衛」さんが「をや(親って意味です)治郎兵衛」と書いた場合のものです。
裁判所の判断としては、氏名を書くのは、遺言者が誰かを明確にするためであって、遺言者が誰であるのか明確であればそれでよいといったとこです。
わかりませんが、「をや」って書いてあり、相続人へ相続させる内容だったことが大きいと思います。
もし書いてなかったらどうなんでしょう。
その他の文面で特定出来ていればいいですが、第三者への遺贈だと特定できるかどうか疑念が残ります。
ちなみに、誰か明確であればよいということなので、芸名でもよいと言われています。
もちろん、有名でみんなが知っているような芸能人じゃないと難しいですよ(笑)。
でも、あえてそんなリスクを負うことはやめて下さいね。
ちゃんと自分の名前をしっかり書きましょう。
どうでしょうか。
自筆証書は特に要件の部分で間違えるとリスクが大きいです。
私は、遺言書は公正証書遺言をお勧めしています。
確かに費用はかかりますが、人生の総決算のような大事なことですので石橋を叩くくらいでよいと思っています。
江戸川区で遺言・相続手続き、相続放棄は司法書士福地事務所 代表 福地良章
この遺言書の印鑑は無効?有効?
今回は意外と相談の多い遺言書に押す印鑑についてクイズ形式(?)で書いてみたいと思います。
第1問
自筆証書遺言書の印鑑は実印じゃなくてはダメ?それとも認印でもいい?
答えは、認印でもOKです。
これは、民法968条に「…印を押さなければならない。」と記述があるだけで、実印とは書いてないので、認印でも有効です。
ただし、私の事務所で相談された方にはできれば実印で押印して下さいとお話しております。
その理由はいざ裁判になった時に、実印を押してあることで、その自筆証書遺言書が本人が書いたことの証拠力が上がるからです。
もちろん、実印が押してあれば絶対かというとそんなこともないのですけど、実印の方が望ましいです。
ちなみに公正証書遺言を作成するときは必ず実印です。
それは公証役場で作成する場合には本人確認の意味も含めて実印での押印と印鑑証明書の提出が必須だからです。
第2問
認印でいいのなら、拇印(指を朱肉につけて指紋を押したもの)でもいいの?
答えはOKです。
これには最高裁の判例はあります。(最判平成元年2月16日)
認印でも問題ないのに、拇印でダメってのは無理があるかなっていうことと、日本の文化として拇印というのものが存在しているので認めても問題ないでしょうというところです。
第3問
拇印でいいのなら、花押でもいいの?
ちょっと花押と言ってもピンとこない方が多数だと思うので簡単に花押を説明します。
花押とは、昔の戦国大名や総理大臣などがするサインで、そのサインにより本人が書いた文章だと証明するものに使っていたものです。
それを踏まえてどう思いますか?
答えはNGでした。
これにも最高裁の判例があります。(最判平成28年6月3日)
理由は、やはり花押というものが一般的ではないからということです。
それとあくまでサインであって印鑑ではないということもあります。
そうはいってもこの判例の当事者は由緒正しい家の方だったようですし、そういうケースではいいのではと思うところもありますが、最高裁は否定しています。
第4問
外国人が日本に帰化した場合でサインのみで印鑑を押さなかった場合は大丈夫か?
答えはOKです。
ちょっと古い判例ですが最高裁が示しています。(最判昭和49年12月24日)
元ロシアの方なのですが、ヨーロッパでは押印の風習がなく、帰化したあとも官庁に出すような書類にしか押印していなかったからというのが理由のようです。
もちろん、押印する方が無難ですので、帰化されている方も押印はして下さい。
第5問
遺言書が2枚以上になってしまったときに契印(紙と紙を印鑑を押して繋ぐこと)をしないで署名がある紙にしか押印がない場合は大丈夫か?
答えはOKです。
ただし、判決文(最判昭和36年6月22日)には
「遺言書が数葉にわたるときであっても,その数葉が一通の遺言として作成されたものであることが確認されればその一部に日付,署名,捺印が適法になされている限り,右遺言書を有効と認めて差支えないと解するを相当とする。」
とあるので、必ずしもOKではなさそうです。
そりゃそうですよね。
勝手に第三者が自分に有利な文章を1枚加えても有効じゃ困りますものね。
文章全体を判断して1枚の遺言書として確認できればということなので、遺言書が2枚以上になってしまう場合には必ず契印を押した方が良いです。
どうでしたか?
クイズ形式というか、司法書士や行政書士の試験問題みたいだったかもしれませんね。
主に判例のあるものを中心に例示してみましたが、判例はその事件の場合で判断しています。
同じようなケースでも事情や時代背景が変われば判例が変更されることもありえます。
せっかく遺言書を作成するなら、後々に争いがおこならいように形式に乗っ取って作成した方が良いでしょう。
遺言書作成のご依頼ご相談お待ちしております。
江戸川区で遺言・相続手続き、相続放棄は司法書士福地事務所 代表 福地良章
亡くなる前から相続放棄って出来るの?(遺産分割と相続放棄)~その1~
令和元年9月29日のYahoo!ニュースに「長嶋一茂 父・茂雄さんの遺産「放棄してる」と明かす」という記事が掲載されていました。
ここで一つ疑問なのは、まだ茂雄さんはご存命なのに、相続放棄が出来るのだろうか?という点です。
相続放棄は、民法915条に記載されています。
一応、条文を見てみると、「相続人は自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に...放棄をしなくてはならない。」
とあるので、相続の開始を知った時、つまり早くても亡くなるまでは相続放棄は出来ないというのが、民法上のお話です。
では、一茂さんは、なぜ「放棄してる」と言ったのでしょうか。
これは、おそらく親族の間で、「茂雄さんの遺産は受け取らない」、言い換えると「亡くなった後に、遺産を受け取らないという遺産分割協議を行う」と宣言したのだと思います。
じゃあ、結局、亡くなる前に相続放棄したことと一緒じゃん!って思いませんでしたか?
実は、民法上の相続放棄と、この「亡くなった後に、遺産を受け取らないという遺産分割協議を行う」と宣言とは全然違うものなのです。
例えば、亡くなる前に遺産は受け取らないと宣言していたとしても、いざ相続が開始したときに「やっぱり法定相続分は請求するよ」と言っても何の問題もないのです。(もちろん一茂さんがそんなことを言い出すとは思いませんが。)
そうなってしまうと、結局、亡くなる前に遺産を受け取らなくする手続きって存在しないのかぁ。と思いますよね?
実は一つ方法があります。
それは、ちょっと長くなってしまったので、また次回に書きますね。
江戸川区で遺言・相続手続き、相続放棄は司法書士福地事務所 代表 福地良章
紀州のドン・ファン氏の遺言書と遺留分
少し前になりますが、9月13日付NHK NEWS WEBに紀州のドン・ファン氏こと野崎幸助さんが「全財産を田辺市にキフする」などと生前に書かれた自筆の遺言書を遺しており、田辺市が受け取る方針を固めたという内容の記事が掲載されていました。
その金額は約13億円だそうです。凄い金額ですね。
ここで気になるのは、遺言書で第三者に全額寄付している内容だと、奥さまとご兄弟は1円も受け取れないのか?ということだと思います。
この答えは遺留分という言葉がカギになります。
法定相続人が奥さまとご兄弟の場合、全財産の1/2が遺留分です。
遺留分とは、遺留分権者が請求すると、この場合では全財産を貰った田辺市が渡さなくてはいけない財産のことです。
今回の遺留分は約6憶5000万円です。
では、遺留分権者は誰かと言うと、実は、奥さまのみなのです。そして、奥さまが請求した場合に取得する遺留分の金額は約6憶5000万円です。
つまり、ご兄弟は1円も受け取れないのです。
紀州のドン・ファン氏のケースは特別としても、実はこれって最も遺言書を作った方がいいケースと似ているのです。
そのケースとは、お子さまのいないご夫婦のケースです。
例えば、不動産や預貯金がご主人名義の場合に、遺言書を作らないでご主人が先に亡くなってしまったとします。
その場合の法定相続分は奥さま3/4、ご主人のご兄弟1/4です。
遺言書を作っておかないと、ご主人のご兄弟に法定相続分の1/4の請求を受けた場合には基本的に払わなくてはいけなくなってしまいます。
しかし、「全財産を奥さまに相続させる」という内容の遺言書を遺しておいた場合には、ご兄弟の相続分、遺留分ともに0円です。
そう、ご兄弟は1円も受け取れないのです。
後に残された奥さま、あるいはご主人のためにも、お子さまのいないケースでは遺言書を遺しておいた方が良いと思います。
当事務所では、遺言書のご相談は無料で行っておりますので、お気軽にお問合せ下さい。
江戸川区で遺言・相続手続き、相続放棄は司法書士福地事務所 代表 福地良章
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